どうも、現役の不動産会社員のmasaru(@masaru)です。
僕の体験談後半です。
僕が勤める会社が保有者ているマンションの賃借人が亡くなり、その第1順位の相続人が相続放棄したところでしたね。
第2順位の相続人
第2順位の相続人と駆け引きや交渉をしていきます!
第2順位の相続人は賃借人のお母さん。
住所は司法書士に聞いているので、まずは内容証明郵便を発送。
自己紹介や、郵便を送った目的などを記載しました。
内容正面郵便は交渉の際やもめ事の可能性がある案件に使います。
連絡がくればスムーズなんだけど。。
と考えていると、発送した2日後に見慣れない市外局番から携帯に連絡が!!(第2順位の相続人は県外で遠方にお住まい)
電話をとると、予想は的中なのだが。。。
郵便をいただいて連絡をしました。第2順位相続人の長男の妻ですが。
なぜ、あなたが。。
と思いましたが、ちょっと待てよと。
ということは、第3順位のお兄さんも一緒に住んでいるのでは?
ある意味、次のステップの問題がなくなったのでうれしい誤算。
でも第2順位の相続人であるお母さんは?
と思った矢先。
第2順位の相続人は高齢で施設に入っています。
これはなかなかハードルが高くなってた。
施設ということは高齢者施設。
丁度コロナ渦だったので、高齢者施設には面会の制限があると聞いていました。
それときちんとお話ができるのかも懸念していました。
事前情報から逆算すると98歳だったので。。。
僕の事情を話して、被相続人の奥様に退去または賃料支払いの旨を話していただけないか?と相談したところ、被相続人の奥様とはだれも面識がないのでお話はできない、家族で相談するが相続放棄します、とのこと。
良かったースムーズにいきそう。
と思いながら、やはり第3順位の相続人である長男も一緒に住んでいたので、第2順位相続人が相続放棄後、第3順位の相続人である長男も相続放棄するとのこと。
やはり相続人としては、事情が分からない相続に関しては相続放棄一択ですね。
僕の一番の目的は被相続人の知人に被相続人兼居住者である奥様に一言いっていただき退去してもらいたいのだが、現実はそう甘くなく、親族同士での付き合いが浅い事や、居住者である被相続人の奥様の性格もあり、力になってくれる人はいませんでした。
強制執行
ここまできたら、残念ながら任意の退去は不可能と判断し強制退去の手配です。
大まかに以下のような流れになります。
①賃借人に賃料請求
②賃貸借契約の解除
③建物明け渡し訴訟
④強制執行
以下順番に見ていきます。
①賃借人に賃料請求
現在滞納している賃料+賃貸借契約書記載の賃料支払遅延損害金(もしあえば)の合計金額とその支払い期日と振込先、振込がない場合は賃貸借契約が解除になる旨を記載してない内容証明郵便で発送。
内容証明郵便とは、郵便局から発送できる郵便方法で、『いつ』『誰が』『誰宛に』『どのような内容か』を証明してくれる郵便です。内容証明郵便で発送した書類を相手方が受け取っていれば証拠としてここるので、『書類を受け取っていない!』などと言い逃れができません。
②賃貸借契約の解除
①賃料の振込がない場合は、賃料の支払い意思がないとみなし、賃貸借契約の解除を行います。①と同じく内容証明郵便にて、賃貸借契約が解除になった旨を発送します。
③建物明け渡し訴訟
3か月以上賃料の滞納→訪問や口頭による支払い請求→書面による支払い請求→連帯保証人や家賃保証会社に連絡→内容証明による請求、ここまでして賃料の支払いがない場合は、賃借人に支払いの意思がないとみなし、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたことなり、訴訟勝訴の確率があがります。
弁護士に明け渡し訴訟の依頼をし、賃借人が裁判を決済した場合は欠席裁判となり、訴訟提起から約3か月程度で結果がでます。
もし賃借人が出席した場合は、賃借人の主張次第で内容や争いの期間が変わってきます。(反論するのか、和解するのか)
今回は欠席裁判の為3か月ほどで勝訴判決がでました。
④強制執行(断行)
明け渡し訴訟で勝訴判決が出ると相手方である賃借人に『建物を明け渡せ』と裁判所から通知が行きます。これでも明け渡さない場合は強制執行(断行とも言います)になります。
強制執行は申し立てをしてから凡そ1か月程度かかります。その間に『明け渡しの催告』をしに行きます。
明け渡しの催告とは、裁判所の執行官や立会人、弁護士、鍵技術者、執行補助者が物件に集まり、鍵を開け、引き渡し期限と強制執行を行う日を記載した書面(公示書と言います)を室内の見やすいところに貼っていきます。
明け渡しの催告時、公示書を室内に貼ることで精神的に大きな圧力がかかるので、この時点で退去に前向きになることが多いです。気の毒ですが。。。
もし鍵がかかっていた場合は居住者の居留守関係なく鍵を開けて入ります。
『引き渡し期限』と『強制執行の日』は違いますのでご注意ください。
引き渡し期限の数日前に強制執行の日になります。
強制執行申し立てから引き渡しまでのスケジュール感は以下のようになります。
強制執行申し立て→約2週間後明け渡し催告→約2週間後強制執行(断行)→数日後明け渡し期日
強制執行目前に
強制執行を進めつつ、賃借人に提案をしていました。
強制執行になると強制的に荷物も出されて住めなくなりますよと。
であれば、そうなる前に次の住処を探して、荷物の整理をして計画的に引っ越してくださいと。
無職と言っていたので事前に当該市町村管轄の福祉事務所にも相談していて、担当者の氏名と連絡先を記載した書類を渡してこちらに連絡してくださいとアナウンス。
すると、強制執行目前に、福祉局の人から連絡が。(強制退去後の事を考え福祉局の人と相談していた)
なんと、兄弟のところに引っ越すとのこと。
早速真相を確かめるために訪問。
すると、話は本当で、遠方の兄弟の家に引っ越すとのこと。
福祉局の人が引っ越し準備で手伝ってくれているようです。
明け渡しの催告の日、大勢で訪れて強制執行の日時を記載した公示書を貼り付けられ、心が折れたとのこと。
たしかに、物々しいオーラを出していましたから。
決心は固いようで、明け渡しに関する合意書に署名捺印をお願いしたところ素直に承諾してくれました。
強制執行目前の約束の退去の日。
鍵の預かりと室内チェックで再訪問。
玄関は開いており、すでに準備万端で待っていました。
玄関から室内がみえるのですが。
荷物めっちゃあるやん。
本当に、あふれんばかりに荷物があるんです。
ただ僕としては想定済みだったので、予め合意書を用意していました。
内容は『残置物は勝手に処分します。文句は言わないでください』
といった内容です。
この合意書もすんなりOK。
そのつもりだったんでしょうね。
残地物の撤去費用も請求できますが、また揉めても大変なのでこちらで処理します。
鍵を預かり最後の最後で、兄弟の話やこれまでの事など、相変わらず一方的に話してくる。。。
早くしないと電車行っちゃいますよ!
というと、歩き出しながら見えなくなるまでずっと一方的に話していました。
室内に入ると、和室の畳の床一部に大きなえぐれがあります。
えぐれというか、長年足で集中的にこすったような感じ。
年中そこでバッティング練習の素振りしていたらこんな風になるのかなーといった感じ。
一体何をしていたのか。。。
ようやく退去完了
とにもかくにも、こうして約1年に渡る退去の交渉がおわりました。
長かったですが、ドラマがあり、経験になった貴重な体験でした。
強制執行は退去まで時間がかかるし、強制執行される占有者はこんな感じなんだなと、社会の勉強になった貴重な体験でした。
この件を通してよくわかったのが、今回の賃借人のような人が日本には沢山いるし、今後増えるので、人と人とのコミュニケーションは老若男女問わず必要なんだなと感じました。
今回の賃借人は特殊な人でしたが、周りや近所に友達や頼る人がいなかったり、寂しい気持ちから良くない行動をとってしまったり、性格が変わったり、世の中についていけなくなったりすると思います。
一人一人が身の回りの人に挨拶や些細な会話をするだけで防げることのように感じ、今後自分がどのように動けばいいのかと考えさせられました。
では今回はここまで。
最後までありがとうございました。
masaru
コメント